房屋税(中国語:房屋稅Fang2Wu1Shui4)は、課税対象となる建物の所有者に対して課される地方税です。土地の所有に対して課される地価税と共に、日本の固定資産税に相当する扱いですが、地価税とは以下のような違いが見られます。
納税期間 |
納税期間 |
納税義務者 |
房屋税 |
毎年5月1日~31日 |
当該月の所有者 ※ |
地価税 |
毎年11月1日~30日 |
8月31日時点での所有者 |
※房屋税は月ごとの計算となります。例えば、7月20日に売却した場合は、1~6月分は元所有者(売主)が支払い、8~12月分は新所有者(買主)が支払います。そして、7月分については所有期間が長い方が支払うこととなり、この場合は元所有者(売主)の方に請求が来ます。
納入方法は地価税と同じく普通徴収なため、請求書を受け取ったら、銀行やコンビニにて支払う仕組みになっています。地価税のように自己申告の制度もないため(地価税でも実質ないに等しいですが…)、非常にシンプルな制度となっています。固定資産税の請求は日本の場合、年に1度のみですが、台湾では2回に分けて請求があるので、その点は注意が必要です。
さて、同じく納税するだけであれば、上記の事項だけ把握しておけば十分ですが、ここでは地価税同様に、その課税根拠も説明していきたいと思います。
まず、房屋税の算定計算式は以下の通りとなります。
★房屋税=房屋評定現値(課税標準額)×標準税率
シンプルですが、課税標準額となる「房屋評定現値」の求め方が少し複雑です。
☆房屋評定現値=房屋標準単価※①×面積×(1-減価償却率※②×築年数)×地段率※③
房屋評定現値を求めるには、いくつかの政府が公表している数値を収集する必要があります。しかし、これらの数値を1つずつ調べて計算するのは、手間のいる作業となります。そのため、実際には、身分証明書と印鑑を持って、管轄税捐処に申請し、房屋評定現値を教えてもらうのが一般的です。
① 房屋標準単価 |
各自治体により公表される建物の価値の基準で、構造(SRC、RC等)・用途(住宅、商用等)・総階層の3つの構成要素により算出されます。日本の固定資産税評価額に相当し、専門家から組織される不動産評価委員会により決定がなされます。各自治体の税捐処ホームページ等で確認ができ、2年に1度改定されます。(台北市税捐処:https://tpctax.gov.taipei/Default.aspx) (参考)台北市35階以下の建築物に係る房屋標準単価一覧表 https://www.laws.taipei.gov.tw/lawatt/Law/P03C3012-20191231-0000-001.pdf ↑高層階になるほど標準単価が高くなります。RC/SRC構造の場合、1類は大型ホテルやレストラン、2類は百貨店や病院、3類は住宅、4類は工場などが該当します。 |
② 減価償却率 |
同じく各自治体により公表されています。耐用年数と残存価値から計算されます。残存価値は耐用年数経過後にも残存する価値であり、建築素材などを売却することで得られる利益を指しています。 (参考)台北市家屋減価償却率及び内容年数表 https://www-ws.gov.taipei/001/Upload/public/attachment/42249115821.pdf ↑この表を見ることで、SRC(鉄骨鉄筋コンクリート造|鋼骨鋼筋混凝土)は、耐用年数60年、残存価値40%、減価償却率は年1%だと言うことが分かります。 |
③ 地段率 |
各自治体により公表され、2年に1度改定されます。基準を100として、一般的に繁華街になるほど、地段率が高くなります。例えば台北の場合は、郊外の住宅街である文山区や北投区は100~130の地段が多いのにたいし、中正区・大安区・信義区は200を超える地段が目につきます。 (参考)台北市家屋街路等級調整率表 https://www-ws.gov.taipei/001/Upload/public/Attachment/727965692.pdf |
さて、房屋評定現値が算出できれば、あとはそれに税額を掛けるだけとなります。房屋税の税率は以下のようになっています。納税義務者はすべて所有者です。
房屋税の種類 |
税率 |
備考 |
自宅、公益賃貸 |
1.2% |
|
その他の住宅 |
1.5~3.6%で各自治体が定める率 |
台北市の場合は戸数による累進課税。 |
営業用 |
3~5%で各自治体が定める率 |
全国一律で3%となっている。 |
なお、地価税と同様に、外国人も自宅用住居の優遇税率を利用することが出来き、条件は、居留証を保持していること、そして住宅用地の特例を利用する住所が、居留証に記載されている住所となっていることとなります。この条件を満たしていれば、申請した当月から(16日を過ぎている場合は翌月から)、優遇税率が適用されることになります。土地税同様に、契約日の前1年間に183日以上、台湾に居住してないといけないなどの特別な条件もありません。
それでは、最後に事例を挙げて房屋税の計算をしてみましょう。
【事例】
・房屋標準単価:10,000元/㎡
・築年数:10年
・面積:40㎡
・減価償却率:1%(SRC)
・地段率:200%
・用途:自宅以外の住宅(投資で賃貸中)
★房屋評定現値(課税標準)=房屋標準単価10,000元×面積40㎡×(1-減価償却率1%×築年数10年)×地段率200% ➡720,000元
★契税=房屋評定現値(課税標準)×その他の住宅の税率2.4%※➡17,280元
※2.4%は台北市において「その他の住宅」に該当する家屋が2戸以下の者に課税される率です。各自治体により異なります。
以上の計算によると、この年は17,280元の房屋税を納めることとなります。なお、建物の価値は毎年下落する為、築年数が古くなるほど、房屋税の金額は安なり、原則として購入した年の税額が一番高いということになります。
ちなみに、この物件が自宅だった場合には、2/1000の優遇税率が適用されるため、720,000元×1.2%=8,640元となり、かなりの節税効果があります。
一般的にマンションの1室を購入する場合は、家屋の面積は大きく、土地の持ち分は少なくなるため、房屋税が高く、地価税は低くなる傾向にあります。以前、実際にあった事例で、超大型のリゾートマンションのワンルームを購入された方がいらっしゃいましたが、
このワンルームは家屋面積が30㎡に対し、土地の持ち分はわずか0.1㎡しかなかったため、房屋税が地価税よりも何十倍も高くなっていました。集合住宅を購入される場合は、地価税よりも房屋税が毎年いくらになるのかを特に注意する必要がありますね。
今回は、日本の建物に対する固定資産税に相当する房屋税の説明をしてまいりました。房屋税は高額になる恐れがあり、且つ継続的にかかる費用なので、購入時に税額をしっかりと把握しておくことをお勧めします。その他、不動産の権利移転や保有にかかる税金の紹介もしていますので、興味がある方は、ぜひ別コラムもご覧ください。